現在の研究内容
もともと自然観察が好きだったのですが、高校時代に現在研究をみていただいている矢原徹一先生の「保全生態学入門」を読み、「保全って科学なんだ」と衝撃を受け、保全生態学に興味を持ちました。現在は「どのような植物が、どこで、どのような状態にあるのか」を明らかにすることを軸に研究をしています。 博士課程では植物を対象とした二つのテーマに取り組んでいます。一つ目は生育地点数の変動をベースに植物の絶滅リスクを評価するというものです。この研究では、神奈川県に生育する植物約1,800種を対象に、1979年から2017年までの生育地点数の増減傾向を定量的に評価しました。またこの結果をもとに、現時点では絶滅危惧種に指定されていないものの、絶滅危惧種と同じくらいのスピードで生育地が消失している「潜在的な絶滅危惧種」を特定しました。この研究のデータは、神奈川県の植物相に精通した市民の方々から構成される「神奈川県植物誌調査会」より提供いただきました。同調査会は、県内に生育する植物約3,000種を対象に、約40年にわたって「どの種が県内のどこに生育しているのか」という調査を行っています。研究を通して、こうした地域スケールでの丁寧な調査が、科学的な根拠にもとづく保全の基盤であると日々感じています。 もう一つの研究テーマとしては、リンドウ科センブリ属の1種であるアケボノソウ Swertia bimaculataを対象に分類の再検討を行っています。この研究は、矢原徹一先生がプロジェクトリーダーを務められている、環境研究総合推進費のプロジェクトの一環として行なっているものです。このプロジェクトには修士課程から参加させていただいています。アケボノソウもプロジェクトの対象種であり、全国的な野外調査とDNA解析の結果、従来1種として認識されてきたアケボノソウは2種に分けられることがわかりました。新たに見つかった種をシライワアケボノソウ S. shiraiwamontana Myotoishi & Yahara と命名し、新種として論文を発表しました。現在は、アケボノソウとシライワアケボノソウの生育環境の違いに着目し、生態学的な研究も進めています。
もともと自然観察が好きだったのですが、高校時代に現在研究をみていただいている矢原徹一先生の「保全生態学入門」を読み、「保全って科学なんだ」と衝撃を受け、保全生態学に興味を持ちました。現在は「どのような植物が、どこで、どのような状態にあるのか」を明らかにすることを軸に研究をしています。 博士課程では植物を対象とした二つのテーマに取り組んでいます。一つ目は生育地点数の変動をベースに植物の絶滅リスクを評価するというものです。この研究では、神奈川県に生育する植物約1,800種を対象に、1979年から2017年までの生育地点数の増減傾向を定量的に評価しました。またこの結果をもとに、現時点では絶滅危惧種に指定されていないものの、絶滅危惧種と同じくらいのスピードで生育地が消失している「潜在的な絶滅危惧種」を特定しました。この研究のデータは、神奈川県の植物相に精通した市民の方々から構成される「神奈川県植物誌調査会」より提供いただきました。同調査会は、県内に生育する植物約3,000種を対象に、約40年にわたって「どの種が県内のどこに生育しているのか」という調査を行っています。研究を通して、こうした地域スケールでの丁寧な調査が、科学的な根拠にもとづく保全の基盤であると日々感じています。 もう一つの研究テーマとしては、リンドウ科センブリ属の1種であるアケボノソウ Swertia bimaculataを対象に分類の再検討を行っています。この研究は、矢原徹一先生がプロジェクトリーダーを務められている、環境研究総合推進費のプロジェクトの一環として行なっているものです。このプロジェクトには修士課程から参加させていただいています。アケボノソウもプロジェクトの対象種であり、全国的な野外調査とDNA解析の結果、従来1種として認識されてきたアケボノソウは2種に分けられることがわかりました。新たに見つかった種をシライワアケボノソウ S. shiraiwamontana Myotoishi & Yahara と命名し、新種として論文を発表しました。現在は、アケボノソウとシライワアケボノソウの生育環境の違いに着目し、生態学的な研究も進めています。
研究のやりがい
絶滅リスク評価の研究では、データを提供してくださった方々に研究結果を還元できたときに、特にやりがいを感じます。この研究で特定した潜在的な絶滅危惧種のリストを神奈川県植物誌調査会へ共有したところ、今後重点的に調査していただけることになりました。日頃から研究を通して保全の現場に必要な情報を提供することを意識しているため、研究結果を実際に現場で使っていただけた際はとても嬉しいです。 アケボノソウの研究では、新種のシライワアケボノソウの新たな自生地を見つけた瞬間が一番嬉しいです。新しい生育地を探す際は、博物館が公開している標本画像や、個人ブログ・SNSなどの写真を手がかりに場所を絞り込みます。実際に行ってみて、「やっぱりあった!」と確認できたときは嬉しいですね。宝探しをしているような感覚です。
絶滅リスク評価の研究では、データを提供してくださった方々に研究結果を還元できたときに、特にやりがいを感じます。この研究で特定した潜在的な絶滅危惧種のリストを神奈川県植物誌調査会へ共有したところ、今後重点的に調査していただけることになりました。日頃から研究を通して保全の現場に必要な情報を提供することを意識しているため、研究結果を実際に現場で使っていただけた際はとても嬉しいです。 アケボノソウの研究では、新種のシライワアケボノソウの新たな自生地を見つけた瞬間が一番嬉しいです。新しい生育地を探す際は、博物館が公開している標本画像や、個人ブログ・SNSなどの写真を手がかりに場所を絞り込みます。実際に行ってみて、「やっぱりあった!」と確認できたときは嬉しいですね。宝探しをしているような感覚です。
博士課程に進学したきっかけ
もともと博士課程に進学するつもりはありませんでした。野外調査はとても好きでしたが、「博士課程に進む=研究者になる」という印象が強く、修士号を取得したら就職しようと考えていました。そのため、学部3年から就活を始め、環境省や環境コンサル、シンクタンクなど、植物の保全に関わることができる職種を中心にインターンや説明会に積極的に参加したり、アルバイトをしていました。ただ、就活を進めるにつれ、自身の就活の軸であった「植物の保全を満足に行える職場であるか」という条件が、なかなか難易度の高い希望であることに気がつきました。たとえば、環境省のインターンに参加した際には、部署や担当地域が2〜3年で変わることを知り、特定の地域で長期的に調査や保全に取り組むのは難しいと感じました。また、ある企業の面接では、社員の方から「生物多様性保全はもちろん重要であり、多くの人はそれを理解している。ただ、企業にはどうしても利益を優先せざるを得ない場合があり、もしかしたら就職後にその点で理想とのギャップを感じてしまうかもしれない」というコメントをいただきました。このような経験から、「植物の保全を満足に行う」という希望を実現させるには、就職先を民間企業や省庁に限定せず、博物館の学芸員や研究者、保全活動を行うNGO・NPOなど、より多様な進路を視野に入れる必要があると考えるようになりました。これらの職種には博士号の取得が求められる場合が多いことから、博士進学を決めました。
もともと博士課程に進学するつもりはありませんでした。野外調査はとても好きでしたが、「博士課程に進む=研究者になる」という印象が強く、修士号を取得したら就職しようと考えていました。そのため、学部3年から就活を始め、環境省や環境コンサル、シンクタンクなど、植物の保全に関わることができる職種を中心にインターンや説明会に積極的に参加したり、アルバイトをしていました。ただ、就活を進めるにつれ、自身の就活の軸であった「植物の保全を満足に行える職場であるか」という条件が、なかなか難易度の高い希望であることに気がつきました。たとえば、環境省のインターンに参加した際には、部署や担当地域が2〜3年で変わることを知り、特定の地域で長期的に調査や保全に取り組むのは難しいと感じました。また、ある企業の面接では、社員の方から「生物多様性保全はもちろん重要であり、多くの人はそれを理解している。ただ、企業にはどうしても利益を優先せざるを得ない場合があり、もしかしたら就職後にその点で理想とのギャップを感じてしまうかもしれない」というコメントをいただきました。このような経験から、「植物の保全を満足に行う」という希望を実現させるには、就職先を民間企業や省庁に限定せず、博物館の学芸員や研究者、保全活動を行うNGO・NPOなど、より多様な進路を視野に入れる必要があると考えるようになりました。これらの職種には博士号の取得が求められる場合が多いことから、博士進学を決めました。
博士課程で大変だったこと・その乗り越え方
早くから博士進学を決めている人には、「この人はきっと研究者になるのだろう」と思わせるような知識や経験がありました。一方で、「自分には博士学生として有しておくべき知識・経験・資質・能力のすべてが足りない」といつも考えていました。こんなことを考えすぎて、研究や大学を休んだ時期もありました。もともと楽観的な性格であり、かつ少林寺拳法部で根性を鍛えてきたぞという自信があったので、「まさか自分が」という気持ちでした。 この状況を乗り越える上で意識したのは、1. 自分と他者を比べないような環境づくりをすること、2. 生活リズムを整えること、の二つでした。1. は自身の研究が解析メインだったからできたことですが、生活拠点を変えたり、毎日違う場所で作業したりと、自分にだけ集中できる環境を意識的に作りました。2. については、就寝・起床・食事の時間を固定する、三食しっかり食べる、太陽の光を浴びて運動する、という三つを意識していました。これらは矢原先生から「研究生活を送る上で必ず守りなさい」とよく言われていたことです。精神的に落ち込んでいた時期は生活リズムがかなり不規則だったため、パートナーや家族の支えもありながら生活リズムを整えていきました。環境や体調が整って研究を再開するうちに、論文が受理されたり、博士研究が一段落したりと、研究面でも自身の基盤が整ったように思います。
早くから博士進学を決めている人には、「この人はきっと研究者になるのだろう」と思わせるような知識や経験がありました。一方で、「自分には博士学生として有しておくべき知識・経験・資質・能力のすべてが足りない」といつも考えていました。こんなことを考えすぎて、研究や大学を休んだ時期もありました。もともと楽観的な性格であり、かつ少林寺拳法部で根性を鍛えてきたぞという自信があったので、「まさか自分が」という気持ちでした。 この状況を乗り越える上で意識したのは、1. 自分と他者を比べないような環境づくりをすること、2. 生活リズムを整えること、の二つでした。1. は自身の研究が解析メインだったからできたことですが、生活拠点を変えたり、毎日違う場所で作業したりと、自分にだけ集中できる環境を意識的に作りました。2. については、就寝・起床・食事の時間を固定する、三食しっかり食べる、太陽の光を浴びて運動する、という三つを意識していました。これらは矢原先生から「研究生活を送る上で必ず守りなさい」とよく言われていたことです。精神的に落ち込んでいた時期は生活リズムがかなり不規則だったため、パートナーや家族の支えもありながら生活リズムを整えていきました。環境や体調が整って研究を再開するうちに、論文が受理されたり、博士研究が一段落したりと、研究面でも自身の基盤が整ったように思います。
博士課程の経験から得たもの
博士課程に進学してよかった点は、自身の最も強い興味や希望、そしてそれをどのような形で実現したいかが明確になったことです。私の場合、「植物の保全を満足に行いたい」という漠然とした希望から、博士課程を経て「地域に根ざし、地域の人々と協働しながら、その地域の植物相の研究と保全に取り組みたい」というものに変わっていきました。 また、論文執筆や国際学会での発表など、英語力と国語力を必要とされる機会が多く、この二つが強制的に鍛えられていったのも、博士進学をしてよかったと感じている点です。
博士課程に進学してよかった点は、自身の最も強い興味や希望、そしてそれをどのような形で実現したいかが明確になったことです。私の場合、「植物の保全を満足に行いたい」という漠然とした希望から、博士課程を経て「地域に根ざし、地域の人々と協働しながら、その地域の植物相の研究と保全に取り組みたい」というものに変わっていきました。 また、論文執筆や国際学会での発表など、英語力と国語力を必要とされる機会が多く、この二つが強制的に鍛えられていったのも、博士進学をしてよかったと感じている点です。
休日の過ごし方
休日はほとんど登山をしています。麓から見ると到底登れそうにない険しい山でも、歩き続けていれば必ず登頂できる、という点が好きです。登山後には温泉に入り、その地域の美味しいものを食べる、という流れが定番の過ごし方です。
休日はほとんど登山をしています。麓から見ると到底登れそうにない険しい山でも、歩き続けていれば必ず登頂できる、という点が好きです。登山後には温泉に入り、その地域の美味しいものを食べる、という流れが定番の過ごし方です。
後輩へのメッセージ
博士進学は、研究者を目指す人だけの進路ではないと思っています。「こういう職種に興味があるので専門性を高めたい」「研究者になるかは決めきれていないが、もう少し研究を続けてみたい」と感じている人は、博士課程への進学をぜひ検討して欲しいです。ただし、進学後は生活リズムの維持を何よりも優先してください。生活リズムの安定は心の安定です!
博士進学は、研究者を目指す人だけの進路ではないと思っています。「こういう職種に興味があるので専門性を高めたい」「研究者になるかは決めきれていないが、もう少し研究を続けてみたい」と感じている人は、博士課程への進学をぜひ検討して欲しいです。ただし、進学後は生活リズムの維持を何よりも優先してください。生活リズムの安定は心の安定です!