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九州大学の教育における生成AIの利活用に関する基本姿勢

九州大学の教育における生成AIの利活用に関する基本姿勢

 

令和5年8月23日

未来人材育成機構 副機構長
教育担当理事  園田 佳巨

 

 教育における生成AIの利活用に関しては、令和5(2023)年410日に、「第1報」として学生向け全学指針を示したところです。

 その後、全学的に、教育における生成AIの利活用についての検討を続けてきておりますが、令和5年7月、文部科学省よりガイドラインが示されたことも踏まえ、本学の教育における生成AIの利活用に関する基本姿勢を、以下のとおりお知らせします。

 なお、本文書において、「生成AI」とは、「質問・作業指示(プロンプト入力)等に応えて文章・画像等を生成するAI」を指します。令和5年8月現在、ChatGPTBing AIBardStable DiffusionMidjourneyなどのサービスが提供されています。

 

1.本学の基本姿勢

 九州大学は、教育憲章第2条において、「日本の様々な分野において指導的な役割を果たし、アジアをはじめ広く全世界で活躍する人材を輩出し、日本及び世界の発展に貢献すること」を教育の目的として掲げ、アクティブ・ラーナーや価値創造人材の育成に取り組んでいます。

 近年、特に、グローバル化や急速な情報化、技術革新が進展し、我々の社会・生活にも大きな変化をもたらしています。そして現在、そのような技術革新の一つとして「生成AI」が注目を浴びています。生成AIは、過去に電気、自動車、テレビ、コンピュータ、インターネット等がそうであったように、その利便性や潜在的な可能性を考えると、間違いなく私たちの生活に根付いていく存在となるものと思われます。

 こうした変化の中、本学の学生が、先に述べた教育の目的に沿った存在たり得るためには、生成AIのような新たな技術についても、意欲的に学び、その仕組みや成り立ち、特徴や限界を正しく理解するとともに、適切に利活用する資質・能力を備えることが期待されます。

 このため、本学は、学生が自身の努力と創造性を信じ、適切な学術倫理を守りながら学んでいくことができるよう、生成AIの利活用に必要な教育を実施します。

 

2.生成AIの利活用が推奨される場面

 生成AIの利活用については、3.で示すような点には留意が必要ですが、生成AIの特徴を知り、積極的な利活用を考えていくためには、まずは生成AIを使ってみることが重要です。

 生成AIの利活用が推奨される場面として、例えば以下のようなケースが考えられます。

(1)アイデアを出す段階や議論の途中の段階で、新たな視点・足りない視点を見つける。

(2)英会話の相手とするなど、自身の語学トレーニングの中で活用する。

(3)授業の中で、一定のテーマに基づき様々なプロンプトを入力し、どのような出力がなされるかを確認・比較し、生成AIの特徴を知り、効果的な活用方法を考える。

(4)自身が作成したプログラミングコードの検証を、生成AIを用いて行う。

 

3.生成AIの利活用における注意点等

 生成AIの利活用においては、生成された物の内容を検証した上で、その生成物を用いるか否かについて、自らの責任で判断することが重要です。その際、具体的には、以下のような点に注意が必要です。

(1) 生成AIに個人情報やプライバシーに関する情報、機密情報をみだりに入力しない。また、AIの生成物にそれらの情報が含まれていた場合、その生成物はみだりに利用しない。

(2) 生成AIが生成した文章・画像等に、他人の著作物との類似性・依拠性が認められる場合、著作権侵害となり得る。特に、生成AIの出力に他人の著作物の内容がそのまま含まれていた場合、これに気付かずに当該出力をレポート等に用いると、意図せずとも剽窃に当たる可能性がある。

(3) 論文や作品の提出等にあたり、生成AIによる生成物の使用が認められているかを予め確認する。認められている場合であっても、生成AIを利用した成果物には、AIを利用した旨やAIから引用している旨を明示する。

(4) 生成AIの生成する文章は必ずしも正確ではないため、自らの責任で、内容の事実確認(ファクトチェック)を行う。

 また、大学における学修は、自ら主体的に学ぶことにこそ、その本質・意義があります。生成AIの出力をそのまま用いるなど、自らの手によらずにレポート等の成果物を作成することは、自分自身の学びを深めることには繋がりません。

 更に、当然ながら、違法行為や、差別・偏見を助長するなど、社会通念上不適切な目的で生成AIを使用すべきではありません。

 なお、学生向けに、生成AIの利活用に係るより詳細な注意点等について、令和5年度の後期授業開始前を目途に別途周知を行いますので、そちらも参照してください。

 

4.授業における生成AIの利用

 授業担当教員は、本学の教育目的(教育憲章第2条)も踏まえつつ、個々の教育プログラムの学修目的、あるいは授業の目的に照らし、それぞれの授業の中で、個々に生成AIの使用ルールを定めることができるものとします。

 個々の授業において定められた使用ルールについて、授業担当教員は、シラバスなどで学生にその内容を明示するものとします。なお、ルールの類型など、詳細は別途学内教員向けに周知します。

 

5.関連情報の収集と発信

 本学は、教員が授業等において生成AIを適切に利活用することができるよう、継続的に生成AIに関する理解を深めるための研修や好事例の収集・発信等を実施します。

 

 なお、上記の内容は、将来的な生成AIを取り巻く状況の変化等に応じ、修正される可能性があります。

 

(参考)

文部科学省「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて」(令和5713日)

https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2023/mext_01260.html

文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」(令和5年7月4日)

https://www.mext.go.jp/a_menu/other/mext_02412.html